What's the matter? No matter - 仏教ブログ

個人的趣味で仏教を勉強するためのブログです。ブログ主は菩提寺を除いて特定の宗教団体と関わりを持っていません。

崔牧『大日経序』 (大日経が世間に流通した因縁譚)

また〔崔牧による〕大日経序に言う。大日経は諸々のブッダ〔にのみ知られる〕不可思議なる境界にして深く秘められた妙用の霊妙なる蔵である。大本は十万頌である。梵〔語〕の〔経典を収める〕房室に秘蔵されているものである。今漢訳されたものは、昔、北インドに勃嚕羅(ボーローラ、Bolora)という小国があったのであるが、その国の街内の北に巨大な石で出来た山があり、〔岩〕壁は雲にかかる〔ほど高く〕そびえ立ち、崖は〔深く〕万丈ほどもあった。その〔山の〕中腹に秘密の法が納められた洞窟があって、毎年七月に〔菩薩の〕聖者たちが集っていたのだが、その中に数千のサルたちもまた同席していた。〔そして大日〕経〔の貝多羅〕を両手で持ち〔洞窟の外に〕出て〔日に〕晒し輝かせていた。〔空は〕すでに晴れ渡り、〔その様を〕見るに〔太陽は〕どこまでも〔高く〕昇ろうとしていた様は、〔あたかも〕雲雁〔が翔け上がるの〕を見るようであった。すると暴風が突然に吹き荒れ、梵莢を吹き飛ばし、〔それらの梵本が〕地上に降りてきた時に、木こりがこれを得た。その珍しく優れたさまを見て、さっそく国王に献上した。王はこれを受け取ったが、〔大日経を〕得たことは未だかつてなかったことであった。その日の日没になって、大きなサルがこの〔大日〕経を〔返してもらうことを〕求めてやってきたが、〔国王が〕すぐには返さないでいると、〔サルは〕自害しようとした。〔国王は〕善巧方便によって丁重に三度このように言った。「経莢はお返ししましょう。しかしどうか〔この経を〕書写させて下さい」と。〔サルは〕王の言葉が丁寧であったのを見て、ついに特例を許可して言った。「これから三日の時を設けてその後に〔再び〕やってきて、返してもらいます。」国王はすぐに人々に分担させて美しく書写させた。期限がやってくると〔経莢を〕すっかり返してしまった。国王は〔大日経を〕ただ太子にだけ相伝し、その経本は外部に流通することはなかった。近頃、中央インドに大行者である阿闍梨がいて、山河を遠く渡り歩いて秘宝〔である教え〕を尋ね求めていた。時の王は阿闍梨を見ると尋常ではない喜びが生じて、〔阿闍梨に〕この〔大日〕経を伝授した。…

 

祕宗教相鈔 (No. 2441_ 重譽撰) in Vol. 77 

又大日經序(大子内卒府胄承軍事清河崔牧述)云。毘盧遮那神力加持經者。諸佛不思議境界深密妙用之靈府也。大本十萬頌。梵方*1祕而密藏。今所譯者。昔北天竺國界内有一小國號爲勃嚕羅。其國城北有大石山。壁立于雲懸崖萬丈。於其半膓有藏祕法之窟。毎年七月即有衆聖集中。復有數千猿猴。捧經出晒。既當晴朗髣髴見之。將昇無階。似觀雲鴈。屬暴風忽至乃吹一梵夾下來時。採樵人輒遂收得。觀此奇特。便即奉獻於王。王既受之得未曾有。至其日暮有大猿來索此經。斯須未還。乃欲殞身自害。善巧方便慇懃再三云。經夾即還。但欲求寫。見王詞懇遂許通融云。且爲向前受攝三日即來。却取。王乃分衆繕寫。及限却還。王唯太子相傳。其本不流于外。近有中天大瑜伽阿闍梨。遠渉山河尋求祕寶。時王覩闍梨有異欣然傳授此經。以其旨趣幽玄卒難精竅。乃與諸聖者簡繁摭要集爲二十五百頌。自法軫東流滿珠果備。此經宗旨祕而未傳其致也。理蘊於詞意絶文外。若不從師受學無得迹造其門。苟非其人制妄傳授。未經灌頂禁其輒開(乃至)有中天竺三藏。厥號善無畏。洞達七藏明總持諸度。徳洽*2西域化流殊方。硏服此經深竅奧旨(文)

*1:房の同義語か。

*2:あまねくの意。